金融機関の担当者との面談と用件の説明方法

金融機関の営業店には、融資など個別相談を行う個室があります。その前には待合のソファーがおかれており、呼び出しを待っている経営者風の人を見かけます。夏の暑い中、クールビスが浸透している今日でも、背広にネクタイをしている方が見受けられ、融資や条件変更等について交渉する経営者の真剣な様子が伝わってきます。

今回は、金融機関の担当者と面談する時の、知っておいて損のない情報を取り上げます。金融機関の支店長、次長、融資課長等の経験者から聞いた金融機関の担当者との面談時のアドバイスです。

面談は、経営者自身の評価が重要視

金融機関は、お金を貸して利息を得る事業ですので、基本的に、企業の資金需要に応じて、積極的に融資をしたいという姿勢でいます。そこで融資の審査において重要なのは、決算書、科目内訳書、申告書、会社業績等の資料になるわけですが、それと同じく重要視されるのは経営者自身の評価です。融資担当者は、経営者の事業意欲の高さ、人間性、経営資質など、経営能力を知りたいと考えています。また、新規事業の融資案件については、事業計画や採算性、資金繰り改善のため融資については、経費削減計画などについて、経営者から直接聞きたいと考えています。

一方、経営者は、金融機関に経営状態や新規事業等について、積極的に説明できれば良いですが、そのような人ばかりではありません。話が苦手な人や、会社の業績が思わしくなく、金融機関の担当者にうまく説明する自信がないなど、プレッシャーを感じる人もいます。初めて融資をお願いする場合は、なおさら不安です。そこで、経営内容や会社の事情をよく知っている顧問税理士に金融機関との折衝の場に同席してもらえると心強い、と考える経営者は多いのではないでしょうか。

しかし、金融機関から見ると、見方は変わります。特に融資案件や条件変更の話では、社外の人が同席することを嫌います。かえって同席はマイナスの場合があるようです。それは、どうゆうことなのでしょうか。

社外の人の同席は好まれない

当たり前の話ですが、会社は経営者が経営をしています。経営方針、経営戦略、資金繰り状況、売上状況、仕入れや経費の状況、労務管理等を熟知しているのが当然です。そこで、金融機関の担当者は、その経営状況を経営者の口から直接聞きたいのです。直接聞くと、経営者の考え方や事業展開の見込みや思い入れがわかります。

特にお金を借りる場合、設備投資であれば、どのような計画のもとで売上や経営効率を上げるか、資金繰りのための借入には、売上見込み、粗利の確保、経費の削減、返済計画は適切かなど、経営者との直接対話を通して、経営者の意欲や考え方がわかります。つまり、お金を貸して良いかを判断するのに、他人の力をかりなくては、説明ができないのでは、貸す方としては躊躇することになります。

その面談の場で、顧問税理士が経営者に代わって熱弁、経営者が頷くだけでしたら、金融機関は、経営者の資質に疑問を持つかもしれません。また、同席者が〇〇コンサルタントなる人物となると、金融ブローカーと疑われ、完全にマイナスです。ここは、経営者としての真剣勝負。自分の言葉で説明することが一番です。

金融機関との面談はどうすれば?

それでも金融機関との話は敷居が高くて、なかなか難しいと考える経営者もいるようです。
JSAの事業再生支援事例の中に、以下のようなことがあったそうです。
商品開発や優れた技術を持っているが、交渉事は苦手な経営者です。

そこで、金融機関との融資相談を代行してくれるという、金融ブローカー(町金)の話に乗ってしまい、「現在〇〇銀行〇〇支店と調整して融資が受けられる見込み」などの話を信用したところ、最初、つなぎ資金としてこの金融ブローカーから担保なしで借りた高利の借金が払えず、挙句の果てには、自宅を担保提供し競売されそうになって、あわてて事務所に駆け込んで来たということです。金融機関は、融資を行う場合は、絶対に仲介業者を入れません。金融機関との交渉は、経営者の役割の一つと言えます。

面談時にはメモや資料を用意し、社長が自ら説明しよう

しかしながら、説明は苦手という人もいると思います。そこで、説明したい内容のメモや資料を用意して、それに沿って説明することがベストです。内容が的確に伝わるだけでなく、短時間に要件を伝えることができます。金融機関からも好感をもたれます。話が得意な経営者は、決算書だけを渡し、創業当時の苦労話から、経営理念、経営方針や実績を長々説明する人もいるようです。しかし、担当者に十分理解いただけているかは疑問です。金融機関の担当者は、何事も文書で報告します。融資関係は報告書や稟議書を作成しますので、この書類の作成が担当者にとっては重い業務なのです。

資料は必ず用意して持って行く

経営者が熱弁をふるった説明を、担当者が克明にメモしていただけたら良いのですが、そうでないと、経営者の説明の趣旨が的確に文書報告されるとは限りません。担当者は、多くの融資先を担当していて、1社に多くの時間を割くことができません。また、現在、金融機関では、昔のように遅くまで残業はさせません。そこで経営者からの説明メモや資料があれば、担当者の事務負担を軽減するだけでなく、面談時間も少なく、的確に情報を伝えることができます。面談内容によっては、事前に顧問税理士と相談して資料を用意するのも方法です。しっかりとした書類で報告するこが良い結果を生むものと思います。

知って得する話

《ここで余談です》
資金繰りの融資を受けるため、国が債務者企業用に公表した「経営改善計画書」に準じた資料を提出することにより、メガバンクから担保なしで追加融資を受けることができた事例を耳にしました。金融円滑化法終了後、国は債務者企業への経営支援の政策として、融資の元本返済猶予(リスケ)を受けている企業が、国から補助金を受けて「経営改善計画書」を作成することにより、再リスケ等の支援を受けることができる制度があります。この「経営改善計画書」は、簡潔で金融機関にとっては経営状況や経営計画を的確に判断ができる書式になっています。そこで、この経営者は、この書式に沿って経営計画と融資の返済計画を作成し、熱心に説明した結果、ほとんど見込みがなかった追加融資を受けることができたそうです。金融機関を説得するには、しっかりとした経営計画が有効である事例と思います。経営計画書は、是非、会計事務所に相談していただければと思います。

みだしなみも経営者の特性を知る情報

金融機関が経営者をみる視点は、なかなかシビアです。服装は人格や資質が滲みでるものと、感覚的に捉えているようです。このことがわかっている経営者は、金融機関と面談する時には、みだしなみには気を付けている方が多いように思います。冒頭の暑い夏にネクタイの経営者は、このこと知っているのでしょう。金融機関と関わりのある仕事をしている人も、金融機関から同じ目で人物評価をされていると考えて良いのではないでしょうか。

ネガティブな社内情報は〔禁句〕

金融機関の担当者は、融資先企業の経営に関するあらゆる情報を収集しています。企業の内紛、経営者の離婚、従業員とのトラブル等は、企業評点が下がる可能性があります。少なくとも余計な情報を金融機関の担当者に言うことは避けた方が良いと思われます。

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